第二巻
『雛菊』
「…もしもし。
メール見たか?
お前、今日休みだろ?
今から行っていいか?
…ん?
当直なんていいんだよ。
オペも無えみたいだしな。」

(院内PHSバイブ音)

「…ちっ、面倒くせえ。
言ったそばからオペらしい。
また電話する。」

(院内PHSバイブ音)

「…お仕事行きますかね。」

医者にだって色々いる。
人を治して本気で幸せ感じる奴もいれば、金の為だけに診なくていい腹を開く奴もいる。
…俺はどれでもない。
医者になった当日に目的を失った、“惰性のお医者様”だ。
[身代わり遊戯]
“唇を少し開いて”
“瞳の奥を見てて”
“甘い声を聞かせて”
“ずっと忘れないで”

所詮恋愛なんてゲームだから
泣いても抱いても笑っても
肩越し舌を出して
今日の“永遠”
明日の“運命”
笑い飛ばすのさ

その手伸ばして
淫らに抱いて
全て吐き出してみても
あの日抉れた
心の溝は
決して埋まる事は無い
夜毎さまよう

“名前は聞かないで”
“理解しようとしないで”

所詮人生なんてゲームだから
勝者も敗者も土の中
データの上書きしても
悔やんだはずの
前と同じ道をたどるだけ

軽くリセットしてみるように
飛び込む勇気さえなくて
無くした物の大きさを
正しく計るだけの日々
今宵誰かと
貴女を重ねぬように
(院長が入ってくる)

「院長…。
何の用ですか?
…フォンタンなら牧野にやらせればいいでしょう。
…避けてないですよ。
じゃあ、連れて来て下さいよ。」

(出て行く院長)

(病名を聞いて震える手を抑える)

少女「失礼します」

(少女が入ってくる)

「はい、どうぞ。
…っ!!
綾美!?」

診察室に入ってきたのは、昔の恋人そっくりな少女だった。
罹っている病気までもが同じ…。
俺が医者になりたかった理由はただ一つ。
小さい頃からずっと一緒にいた綾美を救いたいってだけだったんだ。
それなのに…。
国家試験に合格した当日…綾美は、死んだ。
綾美と過ごした最後の日…十年経った今も、覚えてる。
[別離]
君と二人で居られるのもあと少し
終わりなんて来るはず無かった

君と二人で暮らすはずのこの部屋
お気に入りのぬいぐるみが、ほら

君の瞳に映る僕を見るのが
とても好きでした
溢れるこの想い胸に抱いて
君の愛しい寝顔にキスを

膝抱えて
肩にもたれ
座ったまま
眠りについた
涙は取っておくよ
いつかきっとまた逢う日まで

僕の瞳に映る君は
いつもみたいに眠ってる様で
名前を呼んで起こしてみても
寝ぼけた笑顔見られないけれど

膝抱えて
肩にもたれ
座ったまま
眠りについた
涙が止まらないよ
いつまでもずっと
…愛してる
綾美がいなくなってから、俺の全ては惰性になった。
流されるまま何でもやった。
酒も、女も、薬も。
楽しかった思い出が多いほど辛いんだ。
忘れたいけど、忘れたくないんだ。
…何かに…。
…悪魔でも何でもいいから、何かに救って欲しかった…。
[Medicinal poisoning]
“ネタ”仕入れて
粉にして
Sniffして行けるHeaven

“ブツ”取り出し
針変えて
痕の数だけ感じたHell

キマッて
パキッて
全て忘れてみても

目覚めりゃ
いつもの
青い服に囲まれてる

Good trip
キメてヤれば天国
Bad trip
シケた売人恨んでも
Good trip
命賭けた御遊戯
Disabled person or die

Medicinal poisoning
Medicinal poisoning
Medicinal poisoning
Medicinal poisoning

Can you help me?

ただ、あなたを…
助けたくて…
また2人で…
遊びたくて…
(少女「…んせい?先生?」)

「…君は、俺が必ず助ける。
…必ず。
だから…。
絶対に死なないって約束してくれるか?」

(少女が頷く)

「…治ったら、でっかいぬいぐるみをプレゼントしてやるからな。
じゃあ、後で。」

(少女立ち去る)

「綾美…。
俺はあの子を治すぞ。
お前も手伝ってくれよ…。
さあ、オペの準備だ。」






ピタクリ

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